3分あれば読める私の小言「小説仲間」

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「自分が書きたいことではなく、書きたくないことを書くといい」

そう、私の恩師は言った。恩師は今も小説家として活動している。

恩師の昔の教え子に、身体が不自由で車いすに乗っている少女がいたそうだ。その子に「自分が一番書きたくないことを書いてみなさい」と助言したところ、彼女は車いすの自分を書いた。そしてその後、彼女はその作品をきっかけに作家として活動しているという。

一度、恩師の出版記念パーティに参加したことがある。有名な作家仲間が来ていて、もしかしたら今後二度とない最初で最後かもしれない、小説家たちから助言を授かった。

「ひとりで書いてるの?ダメよ、同じように小説を書く仲間を持ちなさい」

ひとりの女性作家が言った。大学の頃は、同じゼミメンバーで毎回小説の批評会を行っていたので、小説について討論することができた。大学の専攻が専攻だったので、大学時代の多くの友達が読書好きである。しかし、自分が書いた小説を、今や社会に出て忙しく毎日活動している友達に「小説読んで感想をくれ」なんて言えるわけがない。友達によっては子育てに奮闘中だという場合もある。

小説を書く仲間というのは、非常に難しい。ただ読みあって「すごくよかった」だとかいうただの傷のなめあいなんてしたくないし、かといって読むジャンルにも得意不得意があるし、書いているジャンルが違うと意見も出しづらい。それは、恩師と共に数人のゼミ生たちと2年間小説を書いては読んでを延々と繰り返して思ったことだった。

どうやって一緒に切磋琢磨しあえる人間を探すんだよ、というのが私の今でも解決しない疑問である。

どんなにすばらしい小説家のアドバイスだとしても、その人の言葉を鵜呑みにしては、夢が叶わなくなるかもしれない。

私の場合、恩師は私に対して小説家になることをすすめなかった。小説家について、別に私は夢ばかり抱いているわけではないが、結婚の報告をしたときは「小説家になるのはあきらめたんだね」と言われて、愕然とした。結婚したら、小説家になる夢は諦めなければいけないのか、と。恩師は別に悪気があってそんなことを言ったのではない。しかし、恩師には恩師なりの意見や考えがあるのだと思う。

恩師の出版記念パーティで、この議論を小説家たちが私の目の前で繰り広げていた。酔っていたせいもあるかもしれない。しかし私は、完全に素面だったため、かなり記憶に残っている。ある小説家は「結婚して幸せって感じるときは、いい小説は書けない。恨み奴らみなどドロドロしたものが必要」だと言い「でも小説家として成功して結婚して子どももいる人はいくらでもいる。この人たちの言うことは気にしちゃダメよ」と言う小説家もいた。

その日からしばらく私はどんより落ち込んでいたのだが、そんなもの小説家であってもなくても答えは導き出せない、というのが今の私の考えだ。

結婚=幸せという定義は、いったいどこからくるのだろう。結婚したら勝ち、結婚できないのは負けだと、誰が決めるのだろう。人には人それぞれの価値があって、結婚するかしないか、それが幸か不幸かなんて他人にわかるはずがない。

小説家になりたいなら、ただ書いて読むだけでなく、経験を積めともよく言われている。社会に出たことがない人がサラリーマンの小説を書くより、サラリーマンとして社会にもまれた人が書く小説の方が、リアルで読者を引き込むのかもしれない。小説家になりたいなら、何でも経験するべしというのには、私は納得している。だからこそ、結婚生活を送るのもひとつの経験だと思う。他人と共に生活を送るというのが、単純にただ「幸せ」だけを連想させるのはおかしい。

そんなわけで、今日は私たち夫婦の結婚記念日である。小説家になりたい!なんて夢を今も捨てられずにいる妻のことを、どんなふうに思っているかわからないが、これに反対されたことは一度もない。

結婚は我慢ではないと思う。かといって、きれいな言葉ばかりでは片づけられない。結婚に対する価値観がそれぞれ違うわけだから、誰がなんと言おうと間違いはない。私の場合、たぶん夫が人生において今のところ仲間であるのは確かだ。

人生の仲間と、小説の仲間は違う。また、友達とも違う。私にとってはどれも同じように大切であるが、何かひとつあるからといって満足してしまうと、そこから出られなくなってしまうし、先にも進まない。ひとつのものから、自分が手にしたいものすべては手に入らない。片思いから両思いになったときの幸福感と、仕事で成功したときの幸福感は全くの別物と同じで、結婚したからと言って小説家の夢を諦めることはない。どっちもほしいと思っていいじゃないか。自分の人生だもの。

どこの馬の骨ともわからん主婦がなにを偉そうに、と言われたら返す言葉はないのだが、要するに私と似た価値観やこの話に共鳴してくれる人がどこかにいるとしたら、ぜひ共に小説仲間としてがんばりたい、ということなのである。興味のある方は、ご連絡を。

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プロフィール
2あそこのほくろ

プロ小説家を目指す主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。

小説の話
あそこのほくろ
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