3分あれば読めるエッセイ「忘れられない朝」

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花朝、目覚ましが鳴る。しかし、いつも私が起きる時間ではない。だとしたら、家族の誰かが目覚ましを鳴らす時間を間違えたのだろう。

なかなか鳴りやまない目覚まし。それでも、私は布団から離れられなかった。誰か、早く目覚まし止めろ、と思いながら、そのまま眠り続けた。

しばらくして、隣の部屋で寝ていた妹が「お姉ちゃん!起きて!」と叫びながら入ってきた。

「誰…この目覚まし」

「目覚ましじゃない!」

リビングの戸を開けると、一気に入って来る煙。火事だ。目覚ましだと思っていたのは、火事の警報器だった。

朝の6時。私はどうしていいのかわからず、呆然とパジャマのままで立ち尽くしてしまった。

「ドアを開けなさい!」

ふと、玄関から扉をガンガン叩く音がした。

「大丈夫か!ドアを開けるんだ!」

妹を連れ、私は玄関のドアを開ける。すると、外には真上の階に住んでいる家族がいた。

「早く外に出なさい!」

高校1年生だった私とまだ幼い妹は、裸足のまま外に出された。

上の階の男性が土足で部屋に入り、勇敢にも部屋の中を確認しに行く。「あなたたちは危ないから下がっていなさい」と女性が自分の子たちと一緒に私たちを部屋から遠ざけた。

私たちはただ不安で、その様子を見守った。しかし、その後すぐに部屋の中から出てきた男性は、「グリルがつけっぱなしになっていて、魚が焦げていただけだった。何も燃えていない」と驚くべき言葉を口にした。

私は、パジャマのままで「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げて、部屋中の窓を開けた。

それからすぐに母が帰宅した。母は毎朝のジョギングを欠かさない。お弁当や朝ごはんの準備をしていて、火をつけっぱなしにしたまま出かけてしまったのだろう。危うく死ぬかと思った。

本当に、火事にならなくてよかった。そう思うと同時に、上の階の家族には大変申し訳ないことをしたと思う。なぜなら、上の階の家族は、つい最近一軒家を火事で全焼させてしまい、急きょ空いていた上の階に引っ越してきたばかりだったからだ。火事に遭ったときの訓練を常日頃からしているような、的確で素早い指示。

「早く外に出なさい!」

あの一言は、本気だった。一生忘れられない。


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凛子

小説家を夢見る主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。