3分で読めるエッセイ「狭い世界の恋人たち」

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歌

歌うことは、私にとって小説を読むことと同じくらい好きなことである。歌うことと読書することはほとんど同じだと思っている。

小中高と吹奏楽部でトランペットを担当していた。大学ではボーカルとしていろんな人たちとバンドを組み、スカバンドではトランペットを吹いていたこともある。歌う曲はオールジャンル、男女問わず歌っていた。洋楽からアニソンまで、何でもやった。

私が所属していた軽音楽部はパッと見近づきがたい人が多いが、話すと普通なのである。基本的には「バンド活動ができればそれでよし!ガンガン行け、爆音で!」という人たちの集団だ。

よく軽音のバンドメンバーと喫煙所に溜まって、くだらない話をしていたが、大抵の子は「怖い」という印象を受けるのだろう。「凛子ちゃんって、どうしていつもあんなに怖い人たちと一緒にいるの?」と聞かれたこともある。怖いのは見た目だけで、中身は本当に普通なんだよ、という思いでいっぱいだった。

さて、この軽音楽部での恋愛事情が非常に厄介だった。部活や何かのサークルに所属したりすると、どうしても世界はそこだけになってしまうことが多い。これは私が所属していた軽音楽部に限った話ではないだろう。他の部活やサークルでもそうだ。

ひとりの後輩(Kくん)が、同じ軽音楽部に入部した子(Lちゃん)を好きになった。

このふたりは、恋に進展しなかった。私はLちゃんとバンドを組んでいた。かわいがっていた後輩だったし、よく話を聞いたのだが、どうしてもKくんを恋愛対象として見ることができないんだと言った。しかし、Kくんは狙いを変えまたもや同じ軽音楽部の同期のMちゃんを好きになったと言い、ふたりは光の速さでくっついた。ちなみに、私はMちゃんとも同じバンドを組んでいた。こんなふうに、軽音楽部の中で、好きになったり付き合ったり別れたりをこうやって繰り返していく。

一番厄介なのは何かというと、バンドを組んでいるメンバー内で付き合ったり別れたりまた別の同じメンバーと付き合うということだ。最悪、バンドが解散することになる。「恋愛事情がゴタゴタしたのでバンドを解散します」なんて非常にカッコ悪いと思うのは私だけなんだろうか。

「近場での恋は面倒くさいことになる」とは、まさにこういうことだ。

部活やサークルだけに限らず、職場だとかバイト先だとか、そういうひとつの小さな世界で恋人をクルクル回すのはどうしても私は理解できない。中学の頃、女子の中でもトップ3に入る可愛い子のグループがあり、男子の中でもトップ3に入るイケメングループとはいつも仲良くしていた。次第に、女子グループと男子グループの中でうまくカップリングされたかと思っていたところ、彼氏と彼女がチェンジしていることに途中から気が付く。同じメンバーで恋人をとっかえひっかえしているのだ。

私の場合、どう頑張ってもとっかえひっかえできるほどいい女にはなれないので、ただの僻みに聞こえてしまうかもしれないが、私なら友達が付き合っていた人は自然と恋愛対象外になってしまう。最初から好きなら仕方がないが、多分私は、その人と付き合うことで見えて来る友達の顔を知るのが怖いんだと思う。友達は友達で、知らなくていいこともある。恋愛においては、それが見えてしまうわけだから、それを元カレから聞くのが嫌だ。

職場内やバイト内での恋愛のいざこざは、仕事に支障をきたすこともあるだろうし、同じバンドメンバー内なら解散するかもしれない。かと言って、大抵好きな人というのは身近な人になることが多い。高校の吹奏楽部は恋愛禁止だった。顧問の先生も大々的に語っていた。入部して数か月たったある日、私と同期の男の子と一つ上の先輩が付き合っているという噂が広がった。恋愛禁止というだけあって、ぶわっと広がってしまった。そんなとき、私は偶然職員室でふたりとすれ違った。顧問の先生と何やら話をしていて、その後すぐ二人は部活を辞めた。部活より、恋愛を取ったということなのだ。ちょっと感動してしまった私だったが、しかしその後また再び、彼女の方だけ戻ってきた。どうやら、彼とは別れてしまったらしい。あの感動を返してほしい。

今思えば、学生の頃の恋愛ほど必死なものはないんだろうと思う。恋をしたらみんな本当にそれだけになってしまって、とにかく夢中になってしまう。私のような部外者から見れば、何やってんだと思うことも、彼彼女らには人生ドラマなのだ。そんな輝く青春がなかった私には、一生理解できない世界なんだろう。

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プロフィール
2あそこのほくろ

プロ小説家を目指す主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。

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あそこのほくろ
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