3分で読めるエッセイ「全て時が解決してくれるとは限らない」

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動物 イラスト

以前、勤めていた会社のトイレに入ってまったりしていたら、隣の個室に誰かが入った。

「クソ!」

入ってカギをかけてすぐに、声がする。

何があったのか。紙がなかったのか、生理になったのか、なんか仕事でイライラすることがあったのか。

隣でまったりしていた私だったが、急に緊張してしまった。

なんだかわからなかったが、とにかくそそくさとトイレを出た。きっと、ひとりになりたいだろうと思って、私なりの気遣いだった。

仕事に関して、私は偉いことなんてひとつも言えた立場ではない。大学を卒業して、営業職に就くも一年で退職。その後はコールセンター勤務。営業でのストレスを引きずったまま、コールセンターでクレームの対応などに追われ、さらに心がやつれていって、いつしかベッドから起き上がれなくなった。

心というのがここまで身体に異常をきたすものだと、そこで初めて知った。それまで、私は絶対大丈夫!ストレスなんかに負けない!と、学生時代はアルバイトして授業もさぼらず居眠りなんて当然しないで真面目に出席、夜中睡眠を削って小説の執筆をし小説家である教授に提出、さらに部活でバンドボーカルをしていた。やれないことなんてない!私は強いから!と思っていたのに、社会に一歩出たとたん弱すぎて話にならなかった。

学生時代の自分の行動力が恐ろしい。そして初めて、自分がここまで弱い人間だったということに気づかされ、これまで無理して生きて来たんだろうかとさえ思ってしまった。

自分が大人になる、というのは、憧れているなりたい人になるという意味で、それにはやっぱりそれなりの努力が必要なんだと思う。石の上にも三年というが、ただ何にも考えず石の上に三年いただけでは、ただ三歳老けるだけだ。私はずっと、20歳になれば大人になれるとばかり思っていた。小学生だった頃の自分にとっては、20歳は十分大人だ。法律上も大人だし、20歳になれば突然ぐんと大人っぽくなるんだとばかり勘違いしていた。20歳になってみて、どうだったか。なんてことなかった。大人なんて、30歳からだろうと思った。今実際、四捨五入して30歳になった私は、大人ってなんだ状態である。つまり、大人になれるかどうかは年齢を積んだだけではそこまで変わりない。

会社の話に戻そう。

ある時、その当時働いていた会社で事件が起きた。ひとりの社員が突如キレ始めたのだ。

「もう帰らせてくれ!仕事は今日限りで辞めてやる!」

と怒鳴り散らし、そのまま仕事場から消え、次の日から姿を見せなかった。

お前は俺の仕事をちゃんと見ていない!確認してくれと言っているのに、いつも確認してくれない!いつも言っていることが違う!

などなど、暴言を吐きまくっての退場だった。

当然周りはビックリで、私も思わず書類の山から顔をあげた。しかし同時に「わかるなぁ、その気持ち」と思ってしまう自分がいた。

当然、この場でそんなヒステリックになってしまうのはまずい。誰がどう見てもそうだ。大声で怒鳴り散らして、泣きわめいて、これはさすがにまずい。でも、本人はそんなつもりはなく、最初は「どうか俺の気持ちに気づいてほしい」という小さな気持ちから、その上司へ声をかけたのかもしれない。

どんな事情があったのか、私は同じ部署でも仕事の内容が一切違ったので一度も関わったことのない人だった。人から聞いた話では、静かな人でいつも笑顔だったと。

恋愛において、失恋したときは時が解決してくれると誰もが言う。しかし、その真っただ中にいる人間にはまさにこの世の終わりくらいのどん底で、もう二度と昔の自分には戻れないと思うくらいだ。だけどやっぱり、失恋は時が解決してくれるとは私は信じている。

同時に時は全く解決してくれないものもある。仕事での嫌なことや日々のストレスは、自分でちゃんと解決するしかない。放っておいて、我慢し続けて、自分の気持ちに蓋を閉め続けると、私のようにある日ベッドから起き上がれなくなる。自分が強いとか弱いとか、そいういうレッテルを貼る必要もないと思う。先ほど自分で「自分は強いと思っていたけれど弱かった」と言ったが、誰にも当てはまることだから、わざわざ強いか弱いかなんて考える必要はない。うまくガス抜きしなければ、突然とんでもない場所で爆発してしまうこともあるかもしれない。

自分には自分にしかできないことがある。それは目に見えて成果となれば自信にもなると思うが、目に見えないものもある。肩の力を抜いて、深呼吸。生きてりゃ、いいことあるさ。

トイレの中の人にも、会社で突然消えた人にも直接は言えなかったし言ったら当然余計なお世話だろうが、この場を借りて、誰かにとって余計なお世話をつぶやいておく。自分にも向けて。

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凛子

小説家を夢見る主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。