3分で読めるエッセイ「過去の人形」

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和

過去の恋愛に対して「男は名前を付けて保存」「女は上書き保存」とよく言われている。しかし、私は書くことが好きな人として、常にフォルダ分けして保存している。

昔の写真でどうしてもPCに取り込んでおきたいものがあり、昔々のマイクロSDカードを見てみると、なんと10年位前の写真が出てきた。そして、消去したものと思っていた元カレの写真まで出てきた。おお、こんな人だったなぁと思うのと同時に「なぜこんなおっさんと付き合っていたんだろう」と疑問に思ってしまった。彼は9歳年上だったが、当時19歳の私にとっては大人な感じがよかったのかもしれない。好きで好きで仕方がなかった彼も、今見てみればただのおっさんなのである。さらに今現実でばったり遭遇することがあれば、彼は私よりはるかに年上なのでこの写真より老けているわけだ。

さて、男は名前を付けて保存だということは、全員に当てはまらない。しかし、元カレはまさにこのタイプの人間だった。まず、最初に付き合った彼女との話がすごい。細かなことまでいちいち記憶しているようで、その思い出をいちいち教えてくれた。これまで付き合った女性の人数やどんな思い出があったのか、どこへ行ったのか、どんな曲を聴いたのかなどなど。デートの最中にたまたま昔付き合っていた●番目の彼女とすれ違い、「元カノだったかも。ちょっと待ってて」と私を置いて追いかけて行ったこともあった。

そんな男となぜ付き合っていたのか、今の私だったらさっさと「サヨナラ」と別れてしまう。しかし、あの頃は本当にただ彼のことが好きだった。

彼の頭の中では、歴代の彼女が人形のように並べられていて、いつでも見返せるようになっているのだ。仮に、頭の中で関係があった女性を並べて飾っておくのはいいが、それを恋人にたやすく話すのはあまりよろしくない。下手したら、今の彼女を人形として頭の中に飾るハメになる。

「そんなに嫌なら、元カレの元カノ話なんて聞かずに怒ればよかったじゃないか」と思うかもしれない。しかし、私から懇願して聞かせてもらったわけではないし、私もねじ曲がった人間なので、そんな面白い話聞かないわけにはいかない。今後の小説のネタにしたいだけの思いで、常日頃から生きているのだ。それに、彼のことは好きだったが結婚したいとは一度も思ったことがない。結婚まで行かずにどこかで必ず終わるだろう関係だとわかっていたからこそ、余裕の気持ちで彼のお人形たちの話が聞けたわけだ。

実は彼とは、結構ドロドロなはじまりだった。ひとつ言っておくと、不倫ではない。

彼と出会ったのは、アルバイト先だった。面白い人だったので、すぐに仲良くなり、意気投合したものの、私がバイトを始めてすぐに辞めてしまうという話になった。そこで、思い切って私の方から連絡先を渡し、そこからたまに遊ぶようになり、進展して交際が始まった。簡潔に書くと、こうなる。

詳しく書くと、こうだ。以降、元カレをP氏とする。

バイト先は、年齢層が高めで大学生だった私は若かったこともあり結構かわいがってもらえた。しかし、私より一つ年上の女性スタッフ(Tさん)がひとりいた。歳も近いので、より仲良くなれるかなと思ったのに、これが全くの正反対で、一向に仲良くなれなかった。特に私が何かしたわけでもない。ただ、普通に挨拶したりするくらいだったのに、目に見えてわかるくらい避けられる。バイトで休憩中、バックヤードでご飯を食べていると、よくP氏とTさんが一緒に出勤してくることがある。そこで私も気づけばよかったのだが、当時の私は本当に純粋無垢で恋愛には一切関心のない女だった。だから、ふたりが付き合っているなんて考えてもみなかった。

私はTさんとは滅多にシフトが被らなかった。後になって分かったことだが、店長に「凛子さんと同じシフトに入れないでほしい」と言っていたのだとか。店長には、本当に申し訳ない思いである。

私はふたりが付き合っているとは知らなかったが、特にこれと言ってアプローチをしていたわけではない。でも、Tさんからしたら非常に気に入らない新人だったはずだ。

P氏がバイト先を辞めることにしたのも、実はこのTさんと別れるためだったのだとか。Tさんがあまりにもわがままな彼女だったため、どうにも別れたくなってしまったんだと後になって聞いた。実際付き合う前は、お弁当を作ってきてくれたり、さりげない気遣いをしてくれたりと至れり尽くせりな彼女だったそうだが、付き合い始めたとたんに釣った魚にエサはやらない女だと気づいたそうだ。

今思えば、なんてややこしいところに首を突っ込んでしまったのだろうと思う。男女の関係は、本当に厄介だ。P氏のこともTさんのこともよく知っているので、どっちもどっちという感じだ。

このTさんは次に新しい彼氏ができるとシフトが被ることも増え、会うたびに私に自慢してくるようになった。「彼氏がとっても優しいの」「この服も褒めてくれた」「これからデートなの」と、これまで全く口を利いてくれなかったのに、突然壊れたみたいに話し始めた。これは、上書き保存できなかったと思わざるを得ない。

だから、必ずしも男がみんな名前を付けて保存ではないし、女はみんな上書き保存とは言い切れない。

私が一番嫌なのは、Tさんと私が隣同士並んで、P氏の頭の中に飾られているということだけである。

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プロフィール
2あそこのほくろ

プロ小説家を目指す主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。

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