3分で読めるエッセイ「別れのプレゼント」

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和風

私の元カレに、今はユーチューバ―として活動しているという人がいる。

パソコンなんて私なんかよりもっと触れなかったし、なんにも知らなかった彼が、ユーチューバ―になったと知って、世の中なんでもありだなと思った。別れたときに、小さなコピー機のようなものを貸していたのだが、それを返してもらえなかったことが今でも心残りだ。後で請求してやればよかった。

誰かと付き合うと、必ずなにかが残る。誕生日や記念日やクリスマスやバレンタイン&ホワイトデーという、カップルなら避けては通れないイベントが一年にたくさんあるから、何かしら貰ったり贈ったりすることがあるだろう。たとえば私なら、財布や香水をもらった。

物に罪はない。がしかし、どうしても昔の人からもらったものは、あんまりそばに置いておきたくないのが私という人間である。財布なんてブランドだったし、もらって日が浅いうちに別れてしまったので、新品同様だった。でも、どうしても使いたくなかった。財布を見る度に相手のことをいちいち思い出すのが嫌だった。相手の存在はこの世から消えたくらい何にも残さない方がいい。

結局その財布は友達にあげた。もちろん、友達も事情は知っている。元カレからのプレゼントであると知ったうえで、引き取ってもらった。友達は「ブランドものだし、ほとんど新品だからタダでは悪い」と言って、千円くれた。香水も、また別の友達にこれまたちゃんと事情を伝えて引き取ってもらったのだが、これはおすすめしない。においというのは、記憶と非常に結びつく。だから友達がその香水をつけて現れたとき、嫌でも香水のこと、元カレのことを想い出してしまうからである。

さて、この元カレというのが本当にどうしようもない男だった。もらったプレゼントはすべて手元から消し去ったけれど、私の中に残っているものがある。それが、元カレの好きなものだ。

昨日、雨が降っていた。窓を閉め切っていても、その雨脚の強さで自然と聞こえてきた。寝るときに、目を閉じてその音を聞いていると思い出す。元カレは、夜の雨が好きだった。静かで、心が落ち着くのだと言っていた。私はというと、雨が嫌いだった。雨が降れば髪の毛はゴワゴワになるし、濡れるし、いいことなんてない。でもなぜか、今は雨が少し好きだ。昔より、雨の音を聞いて眠れる日は、心が落ち着く。ちなみに夫は、囂々ととどろく嵐の夜が好きなんだとか。

誰かと付き合って、贈るもの受け取るものは、物とは限らない。その人が好きだった食べ物、音楽、場所、本など、そういうものが、自分でも知らないうちに自分の中に取り込まれている。失恋してできた傷あとみたいなもの、と言ってもいいかもしれない。元恋人の好きだったもの、ではなく、今の自分にとって好きなものとなったとき、いよいよ本当にその人との別れが来たということだと私は思っている。人はそうやって、昔の恋人だけにとどまらず、いろんな人との出会いと別れを繰り返して、何かしら影響を受けて、それを自分のものとして成長していくんだと思う。

私がここまで成長できたのは、元カレのおかげだ。だからこそ、この場で言いたい。

コピー機、持ってていいよ。

 

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プロフィール
2あそこのほくろ

プロ小説家を目指す主婦。「通りすがりの人の身体のどこかにあるほくろくらいどうでもいい話」をコンセプトに、このブログで3分で読めるエッセイを執筆。小説家になろう・カクヨム・アルファポリスにてオリジナル小説を公開。

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