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この小説は、私が大学生時代に書いたものなので、ずいぶん前のものになる。時が経つのは早い。私は実際、今もまだその当時とほとんど変わらない気がする。
「あなたの中の愛しい人」というタイトルは、自分でつけておいてなんだが、非常に気に入っている。しかし、中身的なものは、いつも何を書いても、あんまり気に入らない。こんなはずじゃなかったけど、と書いてから熱が一気に冷めてしまう。
物語のあらすじはこうだ。
主人公千晴が6つ歳が離れた永井という男に恋をするところから始まる。この永井には、実は気になる人がいる。千晴は、誰だかわからないその気になる人がどんな人なのか、想像を巡らせては自分の気持ちは永井には届かないと諦めかけていた。
純粋に、ただひたむきに永井を好きだという千晴の気持ちは、次第に永井のあちこちに誰か”特別な女”の陰があるように思えてきて、それが気になって仕方がなくなる。そんな矢先、千晴は一通の手紙を拾った。なんと、千晴が恋い焦がれている永井と同姓同名の人物に宛てられたものだった。送り主は久米茉莉という女性だった。交番に届けるべきなのだが、どうしてもその内容が気になってしまい、そのまま持ち帰ってしまう。
翌日、朝のニュースを見て驚愕する。昨日拾った手紙の送り主久米茉莉が男性とラブホテルで無理心中したという内容だった。
この物語は、好きな人が今でもずっと忘れられない恋として胸に秘めているものを知るチャンスがあったとしたら、どうするかというものだ。実際主人公千晴が偶然にも拾ってしまった手紙は、好きで好きでどうしようもない永井が当時自分と同い年くらいに初めて付き合った女のものだった。実際に、好きな人の思い出の恋を知る機会はそうない。聞いたところで、詳しく話してくれる男性もいないだろう。過去のこととして、美化している場合もある。この物語は、もしそんなことを知ることができたら、知ってしまったら、どうなるのかという物語だ。
実際に当時の物書き仲間の男性は、みんなが怖いと言った。「女って、怖い」と。これが怖いなんて本物の女と付き合ったことがないな、なんて上から目線で思ったわけである。
気になった方は、ぜひ、読んでみてほしい。ほとんど誰にも気づかれない作品なので、読んでくれると嬉しい限り。
「あなたの中の愛しい人」
★野いちご
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